自動車のヘッドライトには、ロービームとハイビームがあります。
ロービームは比較的手前を照らし、ハイビームは遠くの方まで照らせるように作られており、トラックの場合、ロービームは約40m、ハイビームは約100mまで前方を照らします。
ハイビームは遠くの道路まで照らせる分、光が上の方まで届くようになっているので、先行車や対向車のドライバーまで光が届き、まぶしい思いをさせることがあります。
そのため、夜間走行のマナーとして普段はロービームで走行し、明かりのない真っ暗な場所でのみハイビームに切り替えている人が多いですが、2017年3月の道路交通法の改正で、走行中のヘッドライトは原則ハイビームを使用することや、前方に先行車や対向車がいて、安全な走行に悪影響を及ぼす場合にロービームへと切り替えることが義務化されました。
第五十二条 車両等は、夜間(日没時から日出時までの時間をいう。以下この条及び第六十三条の九第二項において同じ。)、道路にあるときは、政令で定めるところにより、前照灯、車幅灯、尾灯その他の灯火をつけなければならない。政令で定める場合においては、夜間以外の時間にあつても、同様とする。
2 車両等が、夜間(前項後段の場合を含む。)、他の車両等と行き違う場合又は他の車両等の直後を進行する場合において、他の車両等の交通を妨げるおそれがあるときは、車両等の運転者は、政令で定めるところにより、灯火を消し、灯火の光度を減ずる等灯火を操作しなければならない。
出典:e-Govウェブサイト「道路交通法」(https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=335AC0000000105)
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法律上では、ロービームが「すれ違い用前照灯」、ハイビームが「走行用前照灯」という名称であり、普段はハイビームで走行し、必要に応じてロービームに切り替える操作がドライバーに求められます。
今回は、夜間の安全運転のために、ハイビームをどう扱っていくべきかについてご紹介します。
目次
ハイビームは暗い場所を走行するために重要なアイテム
そもそも、この改正が行われたきっかけは、夜間、周囲に明かりのない暗い道をロービームのまま走行していた車が、前方の歩行者に気付かず跳ねてしまった事故だと言われています。
夜間の運転で周囲の情報を得るために、ハイビームで遠くの道路まで照らすことは非常に大切です。
また、周囲の自動車や歩行者に、できるだけ早いタイミングで自分の存在を伝える意味でも、ハイビームで照らすことは重要です。
他の車両に悪影響を及ぼすハイビームの使用は規制の対象
上述の道路交通法では、普段の走行にハイビームの使用が求められている一方で、ハイビームによって周りの車に悪影響を及ぼすような運転も規制の対象です。
近年、問題となっているのはこの部分です。
条文にある”他の車両等の交通を妨げるおそれがあるとき”という範囲があいまいで、現状はドライバー一人ひとりの判断にゆだねられているため、人によってロービームとハイビームを切り替えるタイミングが異なります。
自分にとっては暗くて危険だと感じてハイビームにしていても、他の人にとってはまぶしすぎると感じることもあります。
ハイビームのまま走行していると事故につながることも
以前、夜間や雨天時は要注意!「蒸発現象」とはという記事で、夜間や雨天時には対向車のヘッドライトで目の前がまぶしくなり、対向車や道を見失うことがあるとお伝えしました。
ハイビームの使用は夜間走行の安全性を向上させますが、ハイビームの状態で走行していると先行車や対向車にまぶしい思いをさせるだけでなく、対向車の視覚を奪い、交通事故を引き起こす可能性があります。
特にトラックの場合、車高が高くライトの位置も乗用車に比べて高いため、ハイビームにすると多くの車の運転席をまぶしく照らし、事故のリスクが高まりやすくなります。
そのため、トラックにおける夜間のハイビーム使用には細心の注意が必要です。
警察庁での見解
今回の改正に合わせて、警察庁WEBサイトでは夜間のハイビーム使用についてのポイントを、以下のように紹介しています。
夜間の安全運転のポイント
・ 暗い道で対向車や先行車がいない場合は、ハイビームを活用
・ 交通量の多い市街地などや対向車や先行車がいる場合は、ロービームで走行(※)
※ 対向車が自転車の場合も確実にロービームに切り替えましょう。
・ 昼間より速度を落とした運転を励行
~夜間は速度を落とし、前照灯の上向き・下向きの切替えをこまめに行いましょう。~出典:「ハイビームの上手な活用で夜間の歩行者事故防止」(警察庁)(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/highbeam.html)
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このことから、対向車や先行車といった、ハイビームでまぶしい思いをする人がいる場合には、ロービームで走行することを心がけるようにすれば、夜間でも問題なく走行できることがわかります。
おわりに
今回は、夜間の走行中、いろいろな意味で注意が必要なハイビームについてご紹介しました。
ロービームでは照らしきれない暗い場所を明るく照らすハイビームは、安全な走行のための情報収集として重要ですが、扱い方を間違えると、規制に引っかかったり事故の引き金になったりします。
ハイビームを正しく使って、夜間の安全運転に役立てましょう。