物流業界で話題になっている「ラストワンマイル」。
最近よく聞くようになったこの言葉は、もともと通信業界で使われていました。
なぜ、物流の業界で使われるようになり、近年話題になっているのでしょうか。
今回は、「ラストワンマイル」が物流業界でどのように使われているのか、なぜ最近になって話題になっているのかをご紹介します。
目次
そもそも「ラストワンマイル」ってどういう意味?
はじめにお伝えした通り、ラストワンマイルはもともと通信業界て使われていた言葉です。
『一般の消費者や企業に対して、通信事業者が通信サービスを提供するために行う、接続の最終工程』のことで、現在ではインターネット接続における、最後の接続工事のことを指すことが多いようです。
この最後の工程という部分から、物流業界においては『配送時の最終工程=地域の物流拠点から受取主のもとへ向かうまで』のことを指すようになりました。
なぜラストワンマイルが注目され始めたの?
ラストワンマイルがどういう意味かをお伝えしたところで、ここからは、なぜ最近になってラストワンマイルが注目され始めることになったのかをご紹介します。
EC(通販)サイトの発展
ラストワンマイルが重要視され始めたきっかけは、EC(通販)サイトの発展で、個人宅への配送が劇的に増加したことです。
2019年5月の経済産業省による報告では、2007年から2017年までの10年間で、宅配便の個数は約10億個、割合にして31.5%も多くなっています。
一方で、ドライバーの数はそこまで増えていないため、増えすぎた荷物に対応するドライバーが足りなくなり、運送業界全体で人手不足の状態に陥っています。
この問題を受けて、荷物の運び方、特に拠点から個人宅へ届けるラストワンマイルを、どのように効率化するのか見直す運送会社が増えてきています。
再配達の増加
ラストワンマイルが注目され始めた大きなきっかけのひとつに、再配達の増加があります。
再配達は、個人宅に配達した際、受取主が不在で荷物の受け渡しができないため、やむを得ず日時を改めて配達を行うことです。
再配達になると、ドライバーの時間や給料、車両の燃料コストなどにロスが出るため、運送会社はできるだけ再配達を避けたいと考えていますが、近年、再配達の件数が増加しており、大きな問題になっています。
国土交通省が行った調査では、2018年10月1日から31日までに発生した再配達の割合は15.2%、およそ7件に1件は再配達になっている計算です。
再配達をできるだけ少なくするために、受取主のもとへ向かうラストワンマイルで改善できることはないか検討する運送会社も多いです。
ラストワンマイルをもっと効率よく
ラストワンマイルが物流業界でどのような意味を持つのか、業界内の現状とともにお伝えしましたが、もちろん、何の対策もないわけではありません。
ラストワンマイルをさらに効率的に運ぶために、物流業界で実施されている施策を3つご紹介します。
多様な受け渡し方法の導入
現在、個人への配送を行う際には、受取主に直接手渡しで受け渡すほか、配送自体はコンビニなどの店舗までで、受取主が店舗まで受け取りにくる店舗渡し、自宅の宅配ボックスや専用のボックスの中に荷物を入れ、受取主がボックスから回収する置き配など、さまざまな方法で配送できます。
店舗渡しや置き配は、配送時に受取主がその場にいなくても良いため、上述した再配達のリスクを気にする必要がありません。
導入企業の中には、浮いたコストの分、送料の割引などを行っていることも多くあります。
従量課金サービスの導入
運送会社は荷物を運ぶだけが仕事ではありません。
例えば、荷物の保管や梱包など、ものを運ぶ以外のことをしているところは多くあります。
それらの業務のなかで、単体でもサービスとして成り立つものがあります。
定期配送や倉庫業、(タイミングにもよりますが)ギフトラッピングなど、ラストワンマイルまでに行われる業務をただの付帯業務ではなく、サービスとして提供することで、1件の配送による利益を上げることができます。
AIの導入
最近はAIの進化によって、様々な技術が登場しています。
物流の業界でも生かされており、効率的なルートの割り出しや、荷物の効率的な積み込み順などを算出するほか、配送先にドライバーが近づいた際に自動で連絡を入れるなども可能です。
ラストワンマイルに限らず、運送会社にとってAIは切っても切れない関係にあるかもしれません。
おわりに
今回は、近年物流業界で話題となっているラストワンマイルという言葉についてご紹介しました。
ECサイトの普及とともに爆発的に増えた個人宅への配送需要と、そこから見え始めたラストワンマイルの課題に、運送会社がどう取り組んでいくのか、これからも注目です。