トラックといえば、無線で連絡を取りながら運送を行うイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。
しかし現在、トラック無線を使っている運送会社は激減しています。
その原因は何でしょうか。また、今後トラック無線はどうなっていくのでしょうか。
今回は、トラック無線の現在と今後についてご紹介します。
目次
トラック無線とは
トラック無線とは「トラックに搭載されている無線機のこと、ひいてはそれらの無線機を使用して、トラックのドライバー同士や拠点との間の通信を行うこと」を指す言葉です。
トラック無線には、使用する周波数の帯域などによっていくつかの種類があります。
業務無線
業務無線は、その名の通り業務用の無線システムのことです。
企業や団体が、自分たち専用の周波数を登録し、その周波数に合わせた無線機でやりとりを行います。
業務無線を使用するためには、社内に「第三級陸上特殊無線技士」以上の資格所有者が必要です。
資格所有者が常駐していることによって、トラックを運転しているドライバーが資格を持っていなくても、自由に交信することができます。
パーソナル無線
使用するために認可が必要ない周波数を使用した無線です。
ただし、業務無線に比べて出力が弱く、遠方との交信は苦手です。
トラック無線減少の原因とは
近年、トラック無線を使用するドライバーが減っています。
その理由には、大きく分けて2つのものがあります。
スマートフォンの技術の進歩
トラック無線が少なくなった最大の原因は、スマートフォンの技術の進歩です。
スマートフォンの技術は進歩を続けており、現在では、自動車の運転に支障が出ない形で通話することも可能になっています。
その結果、無線機の代わりにスマートフォンがドライバー同士の交信に使われるようになりました。
通話以外にも、カーナビやサービスエリア情報の通知、正確な時刻表示など、さまざまな機能を搭載するようになったスマートフォンは、トラックドライバーにとって無くてはならないツールの一つになっています。
スマートフォン1つでさまざまなことができるようになり、トラック無線が必要なくなったため、トラック無線を使用するドライバーが減ってきているのです。
違法無線の取り締まり
トラック無線の数が少なくなったもう1つの理由は、「違法無線」の取り締まりの強化です。
違法無線とは
違法無線とは、「国内で認可されていない出力・周波数で交信する無線機および、そうした無線機を用いて行う無線交信の方法」を指す言葉です。
日本では、「電波法」という法律によって無線交信を行うためのルールが厳しく定められています。
電波法では、「無線局を開設するには、免許または登録が必要」という決まりがあります。
無線局とは、「ラジオ受信機のような受信のみのものを除く、発信機能を持ったすべての無線機」のことで、周波数に応じてラジオや電話、上述の業務無線やパーソナル無線などが使い分けられています。
違法無線では、電波法に定められた免許や登録の無いドライバーが、本来認可が無ければ使うことができない出力や周波数を出せるように改造した無線機を使い、他の人が使用するための周波数を勝手に使用して交信を行うため、本来その周波数を使用するべきユーザーの交信を妨害していました。
こうした電波法で定められた内容を守らない事業者やドライバーが非常に多くいたため、違法無線の取り締まりが強化されることとなりました。
それ自体は非常に良いことですが、次第に「無線機を使用するためのハードル」自体が高くなっていき、その結果、無線を使用する人が減少したということです。
新たな無線?IP無線とは
さて、全盛期から減少したとはいっても、現在でもトラック無線を使用している会社は存在します。
現在は業務無線のなかでも、携帯電話などと同じく、音声をデータ化して通信する「IP無線」が主流となっています。
IP無線はシステムが携帯電話やスマートフォンと同じく、データ通信回線を使用していることから、従来の業務無線と異なり交信するために免許や登録が必要ありません。
また、データ通信回線は高い安定性を誇っているため、パーソナル無線のように「出力が弱くてつながらない」ということがなく、無線機同士の混線がほとんど無く、安心して自分達専用の回線(従来でいう周波数)を使用できます。
スマートフォンに比べると、電池残量や夏場の熱暴走への心配が不要になるほか、一度に複数の相手と通信する「一斉通話」が手軽にできるなど、社内での管理がしやすいというメリットがあります。
一方で、IP無線はスマートフォンの回線を使っているため、スマートフォンと同じく通信料が発生する点には注意が必要です。
いかがでしたでしょうか。
今回は、スマートフォンという強力なライバルの登場によって近年減少傾向にある、トラック無線についてご紹介しました。
トラック無線は、新たに「IP無線」という形に姿を変えて、運送業界だけでなく土木や建設など、トラックを使用したあらゆる業界で現在でも活躍しています。
従来のトラック無線に比べて導入も容易なので、一度試してみてはいかがでしょうか。