2019年1月に解禁されるダブル連結トラック。
そもそもどういったものなのか、「ダブル連結トラック」という名前だけ知っている、という方も少なくは無いのではないでしょうか。
そこで今回は、ダブル連結トラックとは何なのか、ダブル連結トラックによって得られると予想されるメリットや、発生するかもしれないリスクなどについてご紹介していきたいと思います。
目次
ダブル連結トラックとは
そもそも、ダブル連結トラックとは、どういったものなのでしょうか。
ダブル連結トラックは、大型トラックの後ろにもう1つフルトレーラーを連結した車両で、全長21mを超えるトラックです。
1台で2台分の荷物が運べる車両で、荷台の全長をできるだけ長くするためにショートキャブの車体が採用されています。
2018年11月時点では、運送業界大手の4社(日本梱包運輸倉庫、ヤマト運輸、福山通運、西濃運輸)が実際に車両を使用してデータ検証を行っています。
ダブル連結トラックが解禁されるのは何故か
ダブル連結トラック解禁の背景には、運送業界におけるトラックドライバーの不足があります。
現在、トラックを使った陸上輸送の業界では、深刻なドライバー不足の問題が起きています。
ドライバー不足の主な原因は、運送業界全体での需要の増加です。
国土交通省・厚生労働省が発表しているデータから、運送業界でドライバーとして働いている人の数自体は、2003年ごろからほぼ横ばいで、それに対して業界全体での需要が大きく増えたことにより、ドライバー1人当たりの負担が増え、ドライバー不足に陥っています。
ダブル連結トラックを解禁することで、ドライバー1人当たりが一度に運べる荷物の量が増え、ドライバー不足の解消につながることを期待して、現在解禁のための実験を進めています。
ダブル連結トラックのメリット
ダブル連結トラックのメリットは大きく2つあります。
1つはもちろん、ドライバーの省人化です。
ドライバー1人が運ぶことができる荷物が増えるということは、同じ分量の荷物を運ぶために必要なドライバーの数を減らすことができるということです。
車体が大きいため幹線道路を通って長距離輸送を行うことに特化しているので、大規模な拠点でドライバーを交代させるのも容易であり、労働環境改善や運行管理リスクの低減と、運送効率の向上の両立を図ることもできます。
もう1つは、燃費効率の向上です。
ダブル連結トラックであれば、1台で2台分の荷物を運搬できるので、事業者全体での燃費効率が向上されると予想されています。
また、それに伴い排出される二酸化炭素の量も減るなど、環境面でもメリットがあります。
ダブル連結トラックそのもののメリットではないですが、ダブル連結トラックは2台のうち後ろの1台を切り離して別のトラクターヘッドに繋ぐことで、1台のセミトレーラーとして運用ができるようになっています。
つまり、「ダブル連結トラック」という車両が増えたのではなく、既存のトラックやトレーラーの運用の選択肢が増えたと考えるのが妥当です。
状況に応じて使い分けが可能なので、荷物の量や運ぶ先に合わせて活用していくのではないかと予想されています。
ダブル連結トラックのリスク
さて、ダブル連結トラックの解禁によって、ドライバー一人当たりの輸送効率向上が見込めるというメリットをご紹介しましたが、一方でリスクもあります。
まず、人材不足そのものが解決していないという問題があります。
ダブル連結トラックの解禁はあくまで、ドライバー1人当たりの輸送効率アップの手段なので、根本的に人材が不足していることの解決にはなっていない、という点です。
また、ドライバー1人当たりの作業の負担が大きくなることも懸念されています。
単純に、それまで連結していない車両を走らせていたドライバーが、いきなり新しい形状の車体を扱うようになる上、ドライバー一人の荷物の積み降ろしのためにかかる手間は倍近くに増えます。
作業難易度・量ともにドライバーにかかる負担は非常に大きくなる可能性があります。
ダブル連結トラックの今後
さて、ダブル連結トラックについて、メリットやリスクをご紹介しましたが、それらを踏まえたうえでダブル連結トラックに関係する事柄の「今後」について予想してみたいと思います。
まず、全国の高速道路の3車線化が進むのではないかと考えられています。
今回、解禁に至るまでの実験で使用されているのは東名・新東名の高速道路で、主に片側3車線の道路が使用されています。
また、ダブル連結トラックと同様に、トラックの隊列走行(1台のトラックに追従する形で、自動的に複数のトラックを走行させる方法)の実験も進んでおり、片側3車線の道路が使用されています。
このことからダブル連結トラックは、片側3車線の幹線道路を走行して、一度に大量の荷物を輸送することに特化した輸送方式になり、ダブル連結トラックが走行可能な範囲を拡大するために片側3車線の幹線道路が増えていくのではないか、という考え方です。
続いて、利用環境・作業環境の見直しが起きると考えられます。
ダブル連結トラックは、日本国内に現存するどの車両よりも全長が長く、大きなスペースが必要な車両です。
そのため、従来のトラックターミナルやサービスエリアなどのスペースでは、駐車することができなかったり、十分な作業スペースが確保できなかったりするので、ダブル連結トラックに合わせた作業環境や利用環境の整備が進んでいくと考えられています。
そして、労働環境の見直しが行われることが、半ば希望的観測として言われています。
上述したように、ダブル連結トラックの運用は、他のトラックと比べても大きなリスクがあります。
特に一人ひとりのドライバーの負担が大きくなることが予想されていることから、ダブル連結トラックのドライバーの待遇や労働環境に見直しが入るだろうといわれています。
いかがでしたでしょうか。
今回は、トラック輸送の新たな形、ダブル連結トラックについてご紹介しました。
課題点も少なくないものの、トラック輸送における選択肢が増えることで、運送業界がより活発になっていくことを願っています。