災害や水不足などの時、人々が水を調達する方法として「給水車での供給」があります。
液体を運搬するタンク車の一種で、飲料水や生活用水を運び、人々のもとに届けるために使用されます。
今回は、給水車についてご紹介していきたいと思います。
目次
給水車の目的
日本では上水道や下水道の発達により、飲料水や生活用水などが高い水準で供給、排出されており、一般家庭が生活するのに困らないレベルで循環しています。
しかし、干ばつや水害などの災害によって、生活用水が利用できなくなって水不足に陥ってしまうことがあります。
特に、医療施設や公共施設などの人が集まる場所で水が使用できなくなってしまうと大変です。
そんな時に、外部からの水を確保するために用いられているのが「給水車」です。
災害時に派遣される車両ということで、自衛隊が保有しているほか、自治体や水道を管理している会社などが保有しているケースが多いです。
また、工業用・農業用の水や温泉の湯水の運搬などに使用されることもあります。
給水車の構造
給水車は、飲料水や生活用水など、人々の口に入るような衛生的な水を、無事に目的地に運ぶために特殊な構造になっています。
ここからは、給水車の基本的な構造についてご紹介していきます。
車体(シャシ)
給水車の車体は大きく分けて2通りの種類があります。
トラックの荷台に専用の架装を備えた車体と、トレーラータイプの車体の荷台部分に専用の架装を備えたものがあります。
基本的な機能や用途は同じですが、それぞれに長所・短所があり、細かな目的に合わせて使い分けられています。
トラックタイプの車体は、小回りが利き、車体の最大積載量に応じた運転免許を持っていれば運転できるというメリットがあります。
しかし一方で、一度に運搬できる荷物の量はそれほど多くなく、また運転席の部分と荷台が一体化しているので、現場に到着したら作業完了するまでずっと同じところに居続けなければいけない、というデメリットもあります。
トレーラータイプの車体は、一度に運べる荷物の量が多いのでトラックタイプに比べると大量輸送に向いており、また、運転室と荷台が分離できるので現場に到着後に荷台部分だけ切り離し、次の荷物の運搬に動くことができるようになります。
運送効率面で非常に高い性能を発揮する一方で、小回りが効きにくく、車体の運用には「けん引免許」の取得が必要になるのがトレーラータイプの車体です。
タンク
給水車の荷台の大部分を占めており、最も目立っているのが水を溜めておく「タンク」の部分でしょう。
タンクの材質は、清潔な水を供給するためにステンレスなどのさびや腐食などに強く、成分が染み出したりしないように対処された素材が使用されています。
※一部工業用や農業用に使用される機種では、衛生面よりも頑強さや保守性を重視し、専用の素材を使用しているタンクの車体もあります。
給水口
給水車はタンクから水を提供する車両です。
提供の方法としては必要に応じて給水口から水を取り出す方法や、大型のバルブによって簡易水道や貯水槽などに接続して水を提供する方法があります。
ポンプ
上述のように、給水口から水を取り出して提供するときに、普通に重力に任せて給水口を開けると、タンク内が満タンの時には勢いよく水が噴出し、タンク内の水が減少した時には水の出が悪くなります。
これは、タンクの内部の水量が減っていくことによってタンク内の水圧が下がっていくことが原因なので、給水車のタンク内に圧力をかけるためのポンプが搭載され、水圧を適切に調節して給水口から出る水量を調整できるようになっているタイプの車体もあります。
タンクから給水口に水を送る方法としては、安価な重力式、自吸(タンクに水を吸引すること)が可能な真空ポンプ式、自吸と圧送(圧力を調整して水の供給量を調節すること)が可能な圧力式の3種類があります。
ちなみに、真空ポンプ式や圧力式の場合、ポンプを作動させるために専用のバッテリーが車両を走行させるためのバッテリーとは別に装備されています。
給水車の基本構造は以上の通りで、そこからさらに「マンホール」や「はしご」など、車体によってさまざまな装備が使用されます。
給水車を調達するには
現在、給水車を調達する方法は大きく3通りあります。
「新車での購入」「中古車での購入」「レンタル」です。
新車での購入の場合は、車体をつくっているトラックメーカーと、荷台部分をつくっているメーカーが、それぞれ担当するパーツを製造して作られます。
新車のメリットは、当然「新しいこと」があげられますが、それ以外にも「用途や目的など、自分好みにカスタムできること」があります。
デメリットとしては製造開始から納車までは若干時間がかかり、費用も他の2つの方法に比べてやや高額になっていることです。
中古車の場合は、既に誰かが使用した車両を、中古車販売会社が買い取り、使用できるように整備・清掃し直したものを購入します。
安価で車両を入手でき、購入の手続きが終われば納車が非常に早いのがメリットです。
こちらのデメリットは、目当ての車体を見つけるまでの手間がかかることと、荷台が清潔で、穴や傷があったりしないかを確認しておかないと思わぬトラブルに見舞われる恐れがあることです。
そして、給水車がすぐにでも欲しい人向けの方法として「車体のレンタル」があります。
給水車の貸出を行っている会社に依頼して、一定の期間車体をレンタルし、使用後に返却する方法です。
レンタルのメリットは、レンタル会社によって整備された車体をすぐに使える点です。
また、短期間であれば他の2つの方法に比べて非常に安価に車体を調達できる点も見逃せません。
こちらのデメリットは、あまり長期間の使用になると、中古車どころか新車で購入するよりも高額になることや、あくまで車体の持ち主はレンタル会社であり気を遣う、といった点などです。
また、デメリットではなく気を付けるべきポイントとして、借りる車体の重量や積載量などは忘れずに確認し、使用するドライバーの持っている免許で運転可能な車体を借りることがあります。
さまざまな方法によって給水車を調達し、目的に合わせて活用していくと良いでしょう。
いかがでしたでしょうか。
今回は、給水車とはどんな車で、必要な時にどのようにして車体を調達するかについてご紹介しました。
災害時や断水時、あるいは工業や農業などでの使用の際に今回の記事が参考になれば幸いです。