トラックによって発生する事故は、高速道路上での衝突事故が話題に上ることが多いです。
しかし、実はトラックの事故で発生率が多いのは、バック運転時の接触や巻き込みによる事故です。
バック運転中に車体を後方にぶつけてしまう事故は後を絶たず、場合によっては物損だけでなく、後方にいる人に被害が及ぶことも少なくありません。
プロのドライバーでも、バック運転中に事故が起きるほど難しいバック運転の操作。
今回は、トラックのバック運転が難しい理由と、より安全にバック運転するための対策についてご紹介していきます。
目次
トラックのバック運転が難しい理由
トラックのバック運転は、乗用車に比べて非常に難しく、プロのトラックドライバーでもバック中に後方のものにぶつけてしまうという事例が、年に数回発生しています。
何故、トラックのバック運転はそんなにも難しいのでしょうか。
車体の長さ
トラックのバック運転が難しい理由の1つ目は、トラックの車体の長さです。
一般の乗用車に比べて、トラックは後方に長く車体が伸びています。
例えば、大型トラックの全長は約12メートルあります。
トラックに限らず、自動車のバック操作を行う場合、車体が後方に向かって長くなればなるほど、操作が難しくなる傾向にあります。
車体が長くなると、ドライバーは距離感がつかみづらくなるだけでなく、車体そのものが視界をふさぐ格好になるので、車体後方の視認できる範囲も狭まってしまいます。
運転席側の後方を確認することでさえ難しいのですから、死角が生まれやすく、ミラーで確認しなければならない助手席側はさらに難度が上がります。
運転席の高さ
トラックのバック運転が難しいもう一つの理由は、運転席の高さです。
トラックの運転席は、一般の乗用車に比べて高めに設定されています。
これによってトラックの運転席は、通常の走行中には視界を広く保つことが可能ですが、バック駐車やバックでの走行などを行う際には、その高さが原因で後方のスペースの大きさを正確に測ることが難しくなります。
当然、スペースの大きさを測りにくくなるのに合わせて車体の距離感を測ることも難しくなるため、さらにバック運転が難しくなります。
小回りが利かない
トラックのバック運転の中でも、特にバック駐車の難度を上げているのが、小回りが利かないという点です。
トラックは1つ1つのタイヤが大きく、また前後のタイヤ同士の距離も長いので、小回りが利きません。
バック駐車の際は、駐車スペースに車体を納めるために何度も切り返しを行うことになります。
特に、駐車スペースが狭かった場合、限られた空間の中で繰り返し前進と後退を行いながら、ハンドルを左右に切って車体を駐車スペース内に差し込んでいきます。
そのため、細かなハンドルワークとアクセルワークが必要となり、慣れていないときちんと駐車することができません。
より安全にバック運転するための対策
さて、ここまでバック運転がなぜ難しいかについてお伝えしてきましたが、ここからは、より安全にバック運転するための対策についてご紹介していきます。
一度トラックから降りて後方確認する
まず、後方に人や物がいないかどうかの確認についての対策です。
可能なら、一度トラックを降りて後方に何もないことを確認してから、バック運転を行うと良いでしょう。
特に車体の後ろや助手席側は、運転席のドライバーから見ると死角になるところも多く、事故の危険がより高くなっているため、注意深く確認しましょう。
バックカメラを取り付ける
バック運転を行う場合に取り付けておくと便利なのが「バックカメラ」です。
バックカメラを取り付けておくことによって、バック運転の際に車体後部の状況がはっきりとわかり、より安全でスムーズなバックができるようになります。
ただし、1点だけ注意することがあります。バックカメラは確かに便利ですが、車種によっては死角が発生することがあり、バックカメラがあるからと安心しきっていた時に、思わぬ事故につながってしまう恐れがあります。
その場合は、先に上述の「一度トラックから降りて後方確認」を行った後、バックカメラで後方の状況をリアルタイムに確認しながら、注意深くバック運転しましょう。
進入角度を緩やかにする
バック運転に限らず、自動車は進入角度が急になればなるほど操作が難しくなります。
そこで、進入し始める段階で、角度を駐車スペースとある程度同じ向きになるように調節すると、安全かつスムーズに到着することができます。
進入を始めてから切り返しを行うよりも、ある程度は操作が楽にできるので精神的にも消耗を少なくすることができます。
いかがでしたでしょうか。今回はトラックを運転する上で難しい「バック運転」についてご紹介しました。
バック運転は、運送業界ではトラックステーションやターミナルへの荷物の積み降ろしなどを行うための、必須の技術です。
バック運転を安全に行うことは、もしかしたら他のどの運転技術を覚えることよりも難しいことかもしれませんが、正確にバック運転することができれば、安全な車庫入れや、荷降ろしの際の効率化などの役にも立ちます。
ただ技能を習得するだけではなく、より安全な運転に向けて、鍛え続けていきましょう。