最近、「橋げたにトラックの天井が接触して電車が遅延した」というニュースを聞くことが増えています。
実際、JR九州では、特に大分市内で2019年1月~10月までの間に8件、トラックが防護工に衝突しており、橋げた(陸橋)及び防護工への衝突数が年々増えているとして、注意喚起の文書を大分県のトラック協会に送っています。
以前はそこまで多くなかった橋げたへの衝突が、なぜ近年になって増え始めているのでしょうか。
今回は、橋げたやトンネルなどにトラックの天井や積載物が接触する理由と対策についてご紹介します。
目次
橋げたにトラックがぶつかる原因は2つ
橋げたにトラックの天井がぶつかるのは、経験の浅いドライバーが増えたことと、車両寸法に関する規制緩和の2つが原因として考えられます。
それぞれ見ていきましょう。
経験が浅いドライバーの増加
近年の運送業界は、慢性的な人材不足に陥っています。
中でも、ベテランドライバーの数は少なくなっています。
それは、運ぶ荷物の量が増えることで、以前と同じ業務量をこなしても追いつかないという相対的な理由もありますが、仕事の負担が増えすぎた結果、仕事を辞めていくベテランドライバーもたくさんいるという理由もあります。
そして残るのは、経験がそこまで多くないドライバーばかりになります。
結果、経験の浅いドライバーが、自車の高さを把握しないまま走行し、知らず知らずのうちに高さが足りない場所に進入してしまうことがあります。
また、一人のドライバーが担当する荷物が多くなることで、大型の車両が必要になり、狭い道を通っての配送でも、大型トラックで進入するケースが増えてきたことも、橋げたなどに車体をぶつけやすくなる原因として考えられます。
車両寸法に関する規制緩和
2004年に道路法の規制が緩和された際、自動車の高さ制限が一部変更され、認定を受けた道路で通行可能な高さが3.8メートルから4.1メートルに引き上げられました。
全国で多くの道路が認定を受け、3.8メートルを超えた高さの車体でも、4.1メートル未満であれば通過できるようになりましたが、一部のトンネルや橋の下の道路では、この認定を受けていないものもあります。
16年も前の規制緩和なため知らないドライバーも多く、3.8メートルを超えた車体で認定を受けていない道路を通過しようとして、車体の天井や荷台をぶつけてしまうことが考えられます。
現在ではカーナビの普及により、一度も訪れたことのない場所に向かうケースも多くなりましたが、カーナビで提示されるルートの中には地元の人ですら知らないような狭い道や以前の高さ制限のままの道もあり、経験の浅いドライバーを混乱させ、進めると思い込んでいた場所で橋げたに車体をぶつけることにつながっていきます。
橋げたにトラックをぶつけないために
ここまでご覧になって分かる通り、橋げたやトンネルにトラックの車体をぶつけるのは、ドライバーがその道に順応できていないことが大きな要因です。
重要なのは、ドライバーの注意を促すのではなく、会社の仕組みとして車両を橋げたにぶつからずに済むようにすることです。
ここからは、橋げたやトンネルなどに車両をぶつけないために、会社がどのようなことを実施すると良いのかをご紹介します。
定期的な研修・情報共有
意外と制度として本格的に取り入れられていないのが、ドライバー同士が安全に業務するための研修や、情報共有のためのまとまった時間を確保することです。
安全で効率的な運行は、それだけで燃費を抑え、事故や故障に対応するための費用をかけずに済み、ドライバーの生産性も上がります。
もちろん、高いレベルで導入している運送会社もたくさんあります。
「まだやっていないんだ」というところは一度、導入してみてはいかがでしょうか。
トラック専用のカーナビを導入する
一部の高性能なカーナビでは、運転する車両の情報を細かく登録することができます。
登録した情報をもとに、高さ制限など全ての規制をクリアしたルートを、カーナビが自動で割り出してくれます。
多少値が張るので、新人用や研修用の車にのみ取り付けるなどの工夫をすると良いでしょう。
おわりに
今回は、トラックを橋げたやトンネルなどにぶつけてしまう原因と、その対処法についてご紹介しました。
もちろん、誰もぶつけたくてぶつけている訳ではないと思います。
しかし、例えば橋の上を線路が走っている場合、車体をぶつけてしまうことによって多くの人の仕事や生活に影響を与えてしまいます。
そのため、ドライバー一人ひとりが注意するだけでなく、運送会社がしっかりと管理して、車体を橋げたやトンネルなどにぶつけずに済むよう気を付けなければいけません。
安全な運行を心がけられるよう、関わるすべての人が注意しましょう。