トラックやダンプが作業しているとき、タイヤと地面の間に台座やプレートが差し込まれ、固定されているのを見たことがあると思います。
そうした作業時のタイヤの固定に使用されている器具のことを「輪止め」といいます。
タイヤの輪止めは、どのような目的で使用されるのでしょうか。
今回は、自動車のタイヤに使用する輪止めの目的や種類などについてご紹介します。
目次
輪止めとは?
輪止めとは、駐車している自動車のタイヤと地面の間に差し込むことによってタイヤの回転を防ぎ、自動車が勝手に動かないようにする器具のことです。
「車止め」「車輪止め」「歯止め」とも呼ばれており、乗用車よりもトラックで使用しているケースが多いです。
また、輪止めを使用するのはタイヤの下という非常に目に留まりにくい場所なので、商品にもよりますが、使用後に回収し忘れないように目立ちやすいオレンジ色をしているものに人気が集まっています。
それぞれの輪止めは差し込むタイヤのサイズに合わせた大きさで作られており、左右のタイヤに差し込むために、二つを一組としてロープでつないでいることが多いです。
一つひとつの輪止めは携行できるサイズなので、使用しないときは車内に載せてあります。
輪止めを使用する目的は?
輪止めは大きく分けて2つの目的で使用されています。
車体を固定する
通常、自動車はギアをパーキングやニュートラルに入れたり、サイドブレーキを引いたりすることによって、勝手に動き出さないように固定することができます。
しかし、車体の大きさや路面状況によっては、フットブレーキやサイドブレーキでタイヤを固定するだけでは車体をとどめておくことができず、坂道などで勝手に動き出してしまうことがあります。
特に、大型トラックでこのような状況に陥ると、大事故につながる危険性が高いため、万が一にも自動車が勝手に動き出してしまわないように、タイヤと地面の間に輪止めを差し込んでいます。
進入してはいけない場所への進入を防ぐ
駐車場などで見られる、地面に埋め込んであるコンクリート製の車止めも、輪止めの一種とされています。
ある一定の位置から先へ進入してはいけない場合に使用されます。
輪止めは行わなくてはいけないのか
現在、各都道府県のトラック協会や交通安全協会が、駐車の際に輪止めを設置するように推奨しています。
しかし、「推奨」であって「義務」ではないので、輪止めを行うか行わないかは、各ドライバーや事業者の判断にゆだねられています。
過去にはこんな事故が発生している
過去には、輪止めを使用していれば防げたかもしれない事故がいくつか発生しています。
その中から一つご紹介します。
トイレ休憩のために高速道路のサービスエリアに大型トラックを駐車し、用を足してトイレから戻ってくると、停めたはずのトラックが駐車スペースから忽然と姿を消していました。
慌てて探してみると、駐車場所から300m近く離れた場所に載っていたトラックが転落していました。
その方はベテランのトラックドライバーでしたが、事故が起きた時のサイドブレーキの引きは甘かったかもしれない、と話していました。
人や物にぶつかるような被害は出ていないものの、転落した場所から引き上げるためのレッカー費用や、荷主からの信頼など、失ってしまったものは大きいです。
こうした事故を教訓に、運送会社や引っ越し業者など、長時間駐車することが多い業種では、輪止めをしていないことによって事故が発生してしまった場合に被害が非常に大きくなるため、決して事故を起こさないように輪止めの装着を義務化している会社も多いです。
輪止めをしていれば、荷主にとっても安心
運送会社や引っ越し業者が輪止めを徹底して使用することは、荷主にとっても安心して依頼できるポイントです。
中には、長時間駐車して作業するときに輪止めを使用しない運送会社とは契約しないということをルールにしている荷主もいます。
輪止めにも種類がある?
輪止めは用途や目的、使用する自動車のタイヤや使用場所に応じて素材や形状が異なります。
使用する自動車のタイヤのサイズに応じて、「乗用車用」「大型車用」「2トン車専用」「4トン車用」などのサイズが市販されています。
材質は天然ゴムや合成ゴムなど、「ゴム製」のものが大半ですが、廃プラスチックやポリプロピレンなどを用いた「樹脂製」のものもあります。
ちなみに、タイヤ側の面が装着するタイヤの形にぴったりと収まるタイプのものは「前輪用タイプ」。やや緩やかなカーブを描き、建物のドアを固定するようにタイヤと地面の間に差し込んで固定していくタイプのものは「万能タイプ」です。
いかがでしたでしょうか。
今回はトラックを安全に駐車しておくための「輪止め」についてご紹介しました。
長時間トラックを駐車することが多い運送業界や引っ越しの業界では、万が一の備えと、荷主からの信頼を得るためにほぼ導入必須なアイテムといえるでしょう。