普段道路を走行しているトラックの中には、よく見ると荷台の床の高さが高くなっているものや、低くなっているものがあります。
製造時に「高床」「低床」「全低床」など、それぞれのトラックが対応している荷台の床の高さから、条件に合ったものを選び、製造してもらうことができます。
そこで今回は、トラックの「高床」「低床」「全低床」の特徴と、それぞれのメリットやデメリットについてご紹介していきます。
目次
なぜ床の高さが違うのか
床の高さが違う理由は、トラックの活躍する状況や使用目的が大きく関係しています。
例えば、荷物の積み上げ、積み降ろしが多い仕事で、高床のトラックを使用していると、毎回の積み上げや積み降ろしのときに作業者に余計な負荷がかかり、膝や腰を痛めてしまう原因になります。
そこで、「低床」や「全低床」のトラックを使用することで、作業者への負担を減らし、より効率的で安全な業務を可能にします。
このように、床の高さが違うことによって、業務効率や安全性に影響があるため、トラック購入の際にはよく考えて車体を選ばなければいけません。
「高床」タイプのトラックは長距離走行向き
高床タイプのトラックは、タイヤ径が大きい車両です。
タイヤ径が大きいと、それに伴って全体的な車高が高くなります。
高床タイプの特徴は、大きなタイヤと高い車高による、走行時の安定感の高さがあげられます。
荷台や運転室に対する振動が少なく、ドライバーや荷物にかかる負荷も減るので、長距離での運送に向いています。
さらに、タイヤが大きいことのメリットとして、タイヤが1回転するときの移動距離が、小さいタイヤのトラックよりも長いので、目的地までのタイヤの回転数を抑えることができ、燃費効率がより良くなっています。
逆に、短距離での往復回数が多い仕事に使用する場合、人力での積み上げ、積み降ろしが増えると作業の負担が増えてしまうというデメリットがあります。
※このデメリットに対して、作業者の負担軽減のために車体後部にリフトが装備されているタイプも多いです。
リフトにもさまざまなバリエーションがあり、目的に応じて必要なものが使用されます。
メリットの面からも、デメリットの面からも、長距離向きのタイプのトラックだと言えるでしょう。
「低床」タイプのトラックは短距離で往復回数が多い仕事向き
低床タイプのトラックは、その名の通り床が低くなっていますが、その理由としては、タイヤ径が小さいことがあげられます。
低床タイプのトラックは、運転室側にあたる前側2つの車輪が少し大きく、荷台側にあたる後ろ側2つのタイヤが非常に小さくなっています。
全てのトラックの中で一番床が低いトラックで、後述する全低床のタイプと差別化するために「超低床」と呼ばれることもあります。
短距離の仕事であれば、低床タイプのトラックが向いています。
荷台の床が低いことで、荷物の積み上げや積み降ろしの際に作業者にかかる負担が少なくすみます。
また、タイヤが小さく、旋回するときにハンドルにかかる力が少ないので、ステアリングの負担が抑えられます。
狭い道や入り組んだ道を低速で走行するのに有利なため、住宅街に進入することがある引越しの業界などで重宝されます。
ちなみに、大型トラックにも低床タイプのものはそこそこの台数があります。
実は、大型トラックで短距離を走行するときには、ほとんどの場合ドライバーが1人で積み上げや積み降ろしの作業を行うことになります。
大型トラックとなれば荷物の量も非常に多いため、短距離で大型トラックを運用する際には、低床タイプの車体でないと積み上げや積み降ろしの負担が非常に大きくなります。
低床タイプの車体を採用することで、作業者の負担を軽減できるようになっています。
積み上げや積み降ろしの負担が少なく済む一方で、走行時の性能は高床タイプのものと比べるとやや劣っています。
小さいタイヤは大きいタイヤに比べて衝撃吸収能力が低く、道路の凹凸やちょっとした段差でも運転室や荷台に振動を伝えてしまいます。
トラックにはシャシにエアサスペンションという衝撃緩和装置が備え付けられており、大きな効果を発揮していますが、それでもなお高床タイプのものに比べると揺れを感じます。
また、小さいタイヤ径は、長距離を走れば走るほど消耗が早く、燃費も悪くなるという特徴があり、こうした面からも短距離向きのタイプだといえるでしょう。
「全低床」タイプのトラックは短距離から中距離向け
最後は、全低床タイプのトラックのご紹介です。
全低床タイプのトラックとは高床タイプと低床タイプの、中間程度の高さのタイプのトラックです。
低床タイプと異なるのは、前後4つ、すべてのタイヤがやや小さめのものになっており、積み上げ、積み降ろしのしやすさと走行時の衝撃吸収性をある程度両立しているところです。
短距離から中距離の、積み上げや積み降ろしの回数がそこまで多くない場所で使用されます。
漁港から近隣の店舗などに魚介類を運ぶトラックはこのタイプが多いです。
高床、低床のトラックが持つメリットの両方を獲得したものの、さすがにそれぞれの特化したタイプに比べるとやや弱い部分もあります。
低床のトラックに比べると運転室や荷台への衝撃は少ないものの高床タイプに比べると揺れますし、高床タイプに比べれば荷台は低いものの低床タイプよりは高くなっています。
両方を活かせる現場で扱われるか、さまざまな種類の荷物や現場に対応する必要がある時には大活躍する車体です。
いかがでしたでしょうか。
今回はトラックの床の高さの違いと、それぞれの車体のメリット、デメリットについてご紹介しました。
特に中古車の場合は、すでに作ってある車体を購入する形となるため、購入時には注意が必要ですので、この記事での知識が参考になれば幸いです。