自動車のトランスミッションには、「マニュアル(MT)」、「オートマ(AT)」の他にもう1つ、「AMT」と呼ばれるトランスミッションがあります。
一般の乗用車やオートバイなどではオートマが主流な一方で、トラックでは「AMT」がメインで扱われることが多くなっています。
そこで今回は、主にトラックに使用される「AMT」についてご紹介していきたいと思います。
目次
AMTとは
まずは、そもそも「AMT」とはどういったものか、という点についてご紹介していきます。
AMTとは、「Automated Manual Transmission(オートメイテッド マニュアル トランスミッション)」の略で、「自動化されたマニュアルのクラッチシステム」という意味です。
クラッチペダルが存在せず、クラッチの細かい操作をしなくてもシフトレバーを動かすだけでシフト変更ができます。
クラッチペダルがないことで、運転席のペダルがアクセルとブレーキの2つだけになることから、「2ペダルMT」と呼ばれることもあります。
AMTのトラックが増えている理由とは
一般の乗用車だけでなく、トラックにもマニュアルやオートマのトランスミッションの車両がある中で、なぜAMTのトランスミッションが主流になってきているのでしょうか。
ここからは、AMTのトランスミッションが採用されているトラックが増えてきている理由についてご紹介していきます。
マニュアル車に比べて操作が簡単
上述したように、AMTのトラックではクラッチ操作を必要としないので、マニュアル車に比べて操作が簡単に行える点が特徴的です。
近年のマニュアルトラックでは、変速ギアが8段を超えるような車両も登場し、シフト変更に必要なドライバーの操作が増えてきています。
特に、トラックに乗り始めのドライバーにとって、マニュアル車のようにクラッチの操作に労力を割かれてしまうことは、大きなストレスになったり、事故につながったりする恐れもあります。
AMTの場合、クラッチ操作の必要がなく、シフトレバーを動かすだけでシフト変更ができるので、ドライバーがより運転に集中できるようになるというメリットがあります。
オートマ車に比べて燃費性能が良い
上述の、「マニュアル車に比べて操作が簡単」という特徴について、「『操作の簡単さ』が売りならオートマ車で良いのではないか」と思う人もいるのではないでしょうか。
しかし実は、AMTはオートマ車に対しても有利な点があります。
それが、「燃費性能の良さ」です。
そもそも、トラックに限らず、自動車のトランスミッションでは、「オートマ車よりもマニュアル車の方が燃費性能が良い」とされています。
それには以下のような理由があります。
マニュアル車は「ドライバー自身がクラッチを直接操作してつなぐことで、エンジンから足回りに伝わるエネルギーのロスが少なく、エネルギー伝達の効率が良い=燃費性能が良い」です。
一方、オートマ車では「システムが自動的にクラッチをつなぐためにさまざまなパーツが必要となり、エンジンからのエネルギーが足回りに伝わる途中で減ってしまうため、エネルギーの伝達効率が悪い=燃費が悪い」となります。
このことから、マニュアル車はオートマ車に比べて燃費が良いとされているのです。
そして、AMTのトランスミッションはマニュアルのトランスミッションに構造が近く、「ドライバーが必要なギアに合わせてシフト変更して、クラッチを直接つなぐため、オートマ車よりもエンジンからのエネルギーのロスが少なく、燃費性能が良い」と言えます。
オートマ限定免許で乗れる
近年、自動車の運転免許でマニュアルの免許を取得する人が減少し、オートマ限定免許を取得する人が増加しています。
AMTのトラックであれば、オートマ限定免許でも運転することができるため、トラックドライバーとなれる可能性が広がります。
特に現在、運送業界全体でトラックドライバーの人口が減少しており、ドライバーの確保は業界全体の課題といえます。
AMTのトラックを導入して、採用の間口を広げている運送会社も多く、また、上述したようにマニュアル車に比べて操作が簡単に行えるため、新人ドライバーの研修などに使用することもできるなど、トラックドライバーの確保のためにAMTのトラックが有利な点は多いです。
AMTのトラックで注意が必要な点は?
AMTのトラックが増えてきている理由をいくつかご紹介しましたが、実際にAMTのトラックを活用する際に注意しておきたいポイントもありますので、ご紹介していきます。
マニュアル車に比べて意外とコストがかかる
AMTのトラックの場合、トランスミッションの一部をシステム化しているため、マニュアル車に比べると意外とコストがかかります。
購入価格やメンテナンス費用、修理費用など、「思ったよりも高くついた」とならないように、事前に費用について調べたうえで購入などを決定しましょう。
マニュアル車に比べると燃費性能も良くない
オートマ車に比べると燃費性能が良いことはご紹介しましたが、やはりマニュアル車に比べると燃費性能が良いとは言えません。
そのため、マニュアル車の性能を発揮できるベテランドライバーにとっては、AMTのトラックは燃費性能が悪かったり、扱いづらかったりします。
オートマ車になれていると面食らうことも
以前からずっとオートマ車に乗っていた人がAMTのトラックに乗ると、仕様の違いに驚くことがあります。
業務で使う前に必ず、研修などで「AMTのトラックの操作」の感覚を覚えておきましょう。
いかがでしたでしょうか。
今回は、近年増加している「AMT」のトラックについて、AMTとは何か、AMTの特徴などをご紹介してきました。
さまざまなタイプのトラックがある中で、「使いやすさ」と「燃費」を両立したシステムのトラックです。
今回の記事が、AMTのトラック購入の1つの参考になれば幸いです。