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大型トラックのスペアタイヤ、点検義務化へ

2017年10月、岡山県津山市で大型トラックのスペアタイヤが落下し、それに乗り上げた軽自動車が故障。
避難していたところ、さらにタイヤに乗り上げたトレーラーが横転し、軽自動車の乗員2名が巻き込まれて死亡するという事故がありました。
しかし事故当時の2017年時点では、自動車点検基準にはスペアタイヤに関する定めが存在せず、それぞれの運送事業者に点検の内容などは任せている状態でした。
このため、全ての大型トラックを対象に、緊急点検の実施が国土交通省から関係業界に指示されました。

そして、今後同様の事故が起こらないために、この点検内容を恒久的なものにすべく、大型トラックのスペアタイヤの点検整備の基準が設定されることとなりました。
この事故を受け、国土交通省は2018年6月27日、「自動車点検基準」を見直して改正案を公布。2018年10月に実施予定です。
改正後は、スペアタイヤや工具箱などを車両へ固定する構造の装置について、定期点検を義務化する内容へと変わります。

具体的な内容としては、車両総重量8トン以上または乗車定員30人以上の大型トラック・大型バスについて、3ヶ月ごとの定期点検でスペアタイヤに関する点検項目を追加したほか、自動車の点検整備の手引きも一部が改正され、スペアタイヤに関する文言が追加されます。

2018年の改正で変更・追加される項目

追加される点検内容は以下の通りです。

・スペアタイヤ取り付け装置自体の「緩み」や「がた」と「損傷」の有無
・スペアタイヤの取り付け状態
・ツールボックス取り付け部分の「緩み」と「損傷」の有無

上述の点検内容を、より具体的に定めた「点検整備の手引き」に追加された文言としては、

・スペアタイヤの取り付け装置に緩み、がた、損傷がないかをスパナ、目視、手で揺するなどして点検すること
・スペアタイヤが傾きや緩みなく確実に取り付けられているかを目視、強く押すなどして点検すること
・ツールボックスの取り付け部に緩み及び損傷がないかをスパナ、目視などにより点検すること

と記載されるようになりました。

ちなみに今回は、車体下部に取り付けられたスペアタイヤが原因となった事故なためか、取り付け装置が存在しないトランクルームに置かれたスペアタイヤについては点検の対象からは外れています。

貨物自動車運送事業輸送安全規則と旅客自動車運送事業運輸規則にも改正が加わる

さらに今回、貨物自動車運送事業輸送安全規則と旅客自動車運送事業運輸規則にも改正が加わり、自動車運送事業者による選任を受けた整備管理者に対し、 これまで行っていたように「地方運輸局長からの通知を受けた際に整備管理者に研修を受講させる」という内容を変更し、地方運輸局長からの通知ではなく、定期的に事業者が整備管理者に対して研修を受けさせる義務が発生することとなりました。

整備管理者に対して研修を受けさせる義務の詳細は、

・新たに整備管理者となった者に対し直ちに研修を受講させること
・現在すでに選任を受けている整備管理者に対しては2年に一度研修を受講させること

これは、従来の地方運輸局長からの通知による手法では、通知の紛失などの理由から研修の実施が適切に行われていないという実態があることから、地方運輸局長が通知を行う2年に一度のタイミングで義務として研修を受けさせるようになりました。

また、整備管理者への研修と同様、自動車の整備に関わる整備主任者と自動車検査員に対し、1年に1度研修を行うように通知があったものが、1年に1度研修の受講義務に変わりました。

今回の事故では、全日本トラック協会でも緊急点検が行われる事態となっているため、国土交通省のホームページや全日本トラック協会のホームページなどで、実施内容や改正の内容を確認し、適切な対処をしましょう。

今回の改訂と直接の関係があったかは定かではありませんが、2017年11月には大型トラックからスペアタイヤを落下させ、高速の車両4台に衝突させたとして、運行していたドライバーや、ドライバーの勤務する運送会社の運行管理者、自動車整備工場の点検に携わった従業員3名が書類送検されたという事故もあります。
こちらのケースでは、整備管理者がドライバーに対し運行前の点呼時にスペアタイヤの落下防止措置の指示を怠ったり、車検の際にスペアタイヤをつなぎとめるチェーンが腐食していたことを見落としていたことが、スペアタイヤ落下の原因とされています。

今後、3ヶ月ごとの定期点検の他に、乗車前の点呼時や車検の際の基準なども変更になる可能性があり、新たな情報に気を配っておく必要があります。
3ヶ月ごとの定期点検は、トラックを安全に運行するために絶対に必要なものです。
今後の事故を未然に防ぐためにも、新しい点検整備の基準が実施されて”から”ではなく、できれば”今すぐに”でも新たな基準に沿った点検整備を行ってもらいたいと思います。

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