ダンプトラックを除き、重機が道路を走行するのを見ることは非常に少ないのではないでしょうか。
重機が道路をほとんど走行しない理由にはいくつかあります。
そこで今回は、重機が公道をあまり走行していない理由と、重機が公道を移動する方法についてご紹介します。
目次
重機が公道をあまり走行していない理由とは?
重機が公道を走行していないのには、理由があります。
実は、ほとんどの重機が、そのままでは公道を走行することができません。
重機が公道を走行できない原因としては大きく2つあります。
重量
一部の重機は、その重量から公道の走行を許可されていないケースが存在します。
基本的に大型の重機が該当します。
日本の公道は、アスファルトによって舗装されているもので、路面の耐久性には限界があります。
一定の数値を越えた重量の車両は、路面を傷めてしまう恐れがあり、公道での走行は禁止されているのです。
足回り
重機が公道を走行できない理由のもう1つは、足回りに関係があります。
重機の足回りは、そのほとんどが「無限軌道(いわゆるキャタピラ)」になっています。
無限軌道の足回りを持つ重機は、原則として公道の走行が禁止されています。
無限軌道の足回りは材質が鉄製のものが非常に多いため、材質がゴムのタイヤと比べて路面のアスファルトに対するダメージが大きく、公道を走行することができません。
道路を重機が移動するためには
ここまで説明したように、基本的にほとんどの重機は公道を走行することができません。
しかし、時には重機を他の場所に移動させ、作業現場に向かわなければいけないこともあります。
そうした時に、公道を走行できない重機を移動できるようにする方法がいくつか存在します。
ここからは、重機を作業現場まで移動させる方法についてご紹介していきます。
車体を分解して運ぶ
まず1つ目は、車体を一度分解して作業現場まで運び、現場で組みなおして使用する方法です。
重機を長距離移動するために用いられる方法で、他の方法と異なり、「移動のために特別な手続きを必要としない」ことがポイントです。
ただし、当然ながら大型の重機の場合は「重すぎて」公道を走行できない以上、車体全てを載せて一度に運ぼうとすると、重量がアスファルトの耐久性をオーバーしてしまい結局移動できなくなってしまうため、何回か、もしくは何台かに小分けにして運ばなければなりません。
運搬のための車両を別に用意する手間やコストなどもあり、所有する車両の構成によってはこの方法が取れない可能性もあります。
そうした際に取れる移動方法として、次の方法があげられます。
ナンバーを取得して、通行の許可を取る
公道を「重機を自走させて移動する」場合の方法です。
足回りが「タイヤ」タイプになっている重機の場合は、ナンバーを取得することで移動することができるものがあります。
道路交通法において、公道を走る自動車は「ナンバーの取得」と、「取得したナンバーのプレートの装着」をしなくてはいけません。
一般の自動車が通るような「公道での作業」を一切しないものもある重機の場合、ナンバープレートの取得は強制ではなく、公道を走行したい車両だけナンバーを取得することも可能です。
そのため、公道を走行しようとする重機については、ナンバーを取得しているか必ず確認しましょう。
また、ナンバーを取得したからと言って、そのまま走行できるわけではありません。
重機で公道を走行する場合は、通行のためにいくつかの許可申請をしなければいけません。
1つは道路法に基づく特殊車両の通行許可申請です。
道路法においては、重量や寸法など、ある一定の基準値を超えた車両のことを「特殊車両」と呼び、公道を走行する際には必ず通行許可の申請をしなければならないとされています。
この申請をしないまま通行してしまった場合、罰金刑と行政処分が下されます。
もう1つは道路運送車両法における、保安基準の緩和申請です。
道路運送車両法の保安基準を超えるような大型の重機に対しては、「安全上、公害防止上支障がないと認められる車両」として保安基準の緩和措置を受けていないと、運行することができません。
これらの方法で、足回りがタイヤになっているものについては自走して移動させることができます。
無限軌道式の場合
無限軌道式の足回りを持つ車両の場合は、上述のナンバーの取得や許可申請だけではなく、路面を傷つけずに移動するための措置を取ることによって走行が可能になる場合があります。
例えば、道路上の走行する場所にクッションとなる敷物を敷いておき、その上で移動することが可能です。
※この場合、敷物をして無限軌道式の車両が移動することを前提とした計画を、各種申請の際に提出しなければいけません。
公道そのものが重機での作業現場にあたる場合
ここまでは、重機の保有場所から離れた作業現場への移動の時に必要な手段についてご紹介しました。
そしてもう1つ、重機が公道を走行するケースがあります。
それが、「作業現場自体が公道の場合」です。
本来「人や自動車が通行する」ための道路を、工事や催し物のためにものを置く目的で使用することは道路交通法で禁止されています。
そのため、公道上で重機などを用いて作業する場合には「道路使用許可」を取らなくてはいけません。
道路使用許可を取れば、重量や足回りの種類に関係なく、許可を受けた範囲内での重機の移動が可能になります。
いかがでしたか?
今回は、ほとんどの重機が公道を走行していない理由についてご紹介しました。
重機が公道を走行するためには、さまざまな条件をクリアする必要があるため、重機自体が公道を自走することが少ないものの、日々いくつもの現場に向かい活躍しています。
日本の安全や、経済を支えている重機は今後のオリンピック需要で見かけることも増えていくかもしれませんね。