トラックや重機など、さまざまな機械を動かすのに活躍している「油圧」ですが、そもそもこの油圧とはどういったものでしょうか。
また、油圧で稼働している機械のメンテナンスには、どのような方法をとれば良いのでしょうか。
今回は、トラックや重機などで活躍している油圧についてのご紹介です。
目次
「油圧」とは
そもそも、油圧とはどのようなものなのでしょうか。
油圧とは、主に鉱物油などの液体(油圧作動油)を、エネルギーの伝達媒体とした駆動系のこと、とされています。
空気や油は、圧力をかけることにによって簡単に変形する性質を持っています。
ある容器の中一杯に油を満たし、完全に密封した状態で一部に力を加えていくと、中の油は容器の外に出ようとして「外側に向けて押し返す圧力」を、容器に対して一定の力で生み出します。
このとき、油からの圧力を受ける面積が大きければ大きいほど、受ける圧力の合計値は大きくなるという法則があります。
これを「パスカルの原理」といい、油圧のシステムはすべてこの原理を利用しています。
容器にあらかじめ「圧力を加える部分」と、「圧力を受け止めて作動する部分」を用意して、圧力を受け止める部分の面積を大きくすることで、大きな効果を発揮させることができるようになります。
トラックや重機などの油圧システムの場合は、ポンプ(圧力を加える部分)によって可動部分の容器内の油にかかる圧力の「量」や「方向」を調整することで、モーターやシリンダーなど(圧力を受け止める部分)を動かし、トラックの荷台のダンプアップや、油圧ショベルの操作、クレーンの吊り上げなどを行っています。
油圧のメリット
油圧のシステムの最大のメリットは、小さな力でより大きな物を動かすことができ、エネルギーを生み出すためのポンプも小型化、軽量化することができる点です。
また、作業員が操作してからの動作の反映が素早く、さらに力の方向や強さ、速度などを自由に調整できる点も大きなメリットです。
このため、油圧ショベルのように複雑な動きをするものや、トラッククレーンのように運搬するものを慎重に運ぶことがある車体との相性が良く、さまざまな状況に対応可能です。
油圧のデメリット
油圧システムのデメリットとしては、やはり油を取り扱っている関係上、油漏れが起きてしまったり配管の劣化が起こってしまった場合、動作不良や火災などが起こってしまう恐れがある点が挙げられます。
特に、油圧システムを使用している車体では、システムの起動などに電気を使用しているため、油漏れが起きた場合、油に通電し火災となるおそれが非常に高くなってしまうので、こまめなメンテナンスは欠かせません。
そこでここからは、トラックや重機などの油圧システムの、自身の手で行うことができるメンテナンスについてご紹介していきます。
油圧システムのメンテナンス方法について
油圧作動油の点検
油圧作動油は、油圧装置の根幹を成す基本要素の1つです。
油圧作動油にトラブルがあると、油圧装置全体のトラブルにつながります。
油の温度管理を行い適正な粘度を保つことや、汚れや水分の混入を防ぐこと、油が劣化した場合には油の交換を行うなどが有効です。
油圧作動油の劣化は油の色で確認することができます。
油が劣化していくと色が茶色になる他、水分が混入した場合は白く濁っていきます。
点検時に色の変化が確認できた場合には早めに油圧作動油を交換することをおすすめします。
ポンプ部分の点検
油圧作動油に圧力を加え、モーターやシリンダーなどに油圧作動油を送り込む機能を持ったポンプ部分には、油圧作動油から押し返してくる、高い圧力がかかります。
そのため、 ポンプ内部が劣化していたり破損したりしていると、油漏れが起こり油圧の圧力効率が落ちてしまったり、火災につながりやすくなってしまいます。
また、ポンプからつながっているシリンダーやクッションなどが劣化していると、動力部分とポンプ部分両方の破損につながりやすく、 動作不良が起こりやすくなってしまいます。
ポンプやシリンダー、クッションなどは車体の内部で動作するものが多いため、点検や整備、交換を行うには一度それぞれを取り出して確認しなければなりません。
それぞれパーツ量が多く、全てのパーツをすみずみまで点検しようとすると時間と手間がかかるため、事前に予定を調整しておき、まとまった時間を作ってメンテナンスをする必要があります。
作業予定は十分余裕をもって立てておき、しっかりと全てのパーツをメンテナンスできるようにしましょう。
いかがでしたか?
今回は、トラックや重機を運用するために必須ともいえる、油圧についてご紹介しました。
油圧の特性を知っておくことによって、より効果的に運用ができたり、より良いメンテナンスにつながったりするので、この記事でご紹介した情報が参考になれば幸いです。
※トラックの重要なパーツの1つで、油圧を使っている「PTOシャフト」について、こちらの記事でご紹介しています。
「PTOシャフト」とは?役割や整備についてご紹介