2018年6月、国土交通省が自動車運送事業のドライバー不足に対して、事業者の掲げる労働条件や労働環境などの改善と、ドライバーの確保、育成のための取り組みとして「自動車運送事業者のホワイト経営認証」を行うことを、同月11日の「自動車運送事業のホワイト経営の『見える化』検討会」で発表しました。
今回は、自動車運送の業界で働くドライバーにとって深いかかわりがある、「自動車運送事業者のホワイト経営認証」についてご紹介していきます。
目次
自動車運送事業者のホワイト経営認証とは
現在、トラックを使用した貨物の運送や、バス・タクシーを使用した人の輸送などの自動車運送事業では、ドライバー不足が深刻化しています。
大きな課題として、労働条件や労働環境の見直しと改善、戦力となるドライバーの確保と育成が挙げられます。
これらの課題の改善を積極的に取り組んでいる事業者に対して、労働環境が優良な「ホワイト経営企業」と認証し、雇用の促進や社員の定着につながっていく制度が「自動車運送事業者のホワイト経営認証」です。
2018年10月現在時点で検討されている「ホワイト経営認証制度(仮称)」では、申請した事業者は経営状態の優良度によって1つ星」~「3つ星」の3段階で評価され、取得には50~60項目ある認証基準を高い水準でクリアすることが求められる、とされています。
認証を受けた事業者は、国土交通省や、認証を実施する団体のホームページなどに掲載されるほか、所有する車両に「認証マーク」を表示したり、求人票や求人サイトなどに認証を受けていることを記載したり、国や事業者団体によって広報されるなど、さまざまな方法で発信される予定で、荷主による優良事業者の選別や、雇用状況の改善につながると期待されます。
ホワイト経営認証のメリット
これまで、自動車運送事業者のホワイト経営認証以外に、すでにいくつかの業界で「ホワイト経営認証」は実施されてきました。
ホワイト経営認証にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
事業者のメリット
事業者にとっては、第三者からの客観的な視点で「優良経営の事業者である」というお墨付きを得られることが、ホワイト経営認証の最大のメリットであるといえます。
客観的な評価として「優良経営」のお墨付きが得られることは、その事業者の信用や信頼につながり、より良い仕事や雇用につながります。
また、国土交通省のホームページでは、「自動車運送事業のホワイト経営の『見える化』検討会」に使用された資料として、ホワイト認証のための項目をまとめたものを見ることもできます。
認証を受ける、受けないにかかわらず、雇用環境や社内環境を是正しようと思っている事業者にとって役立つ資料になるのではないでしょうか。
国土交通省の、「自動車運送事業のホワイト経営の『見える化』検討会」の詳細はコチラ…「自動車運送事業のホワイト経営の『見える化』検討会」 国土交通省
顧客・取引先のメリット
トラックの運送事業においては「荷主」にあたります。
仕事の依頼や交渉を行う際に、より良いサービスを安心して受けることができるかどうかの基準の1つとしてホワイト経営認証が機能するので、仕事の依頼先や取引先を選びやすくなります。
求職者のメリット
求職の際に就職先を選ぶ基準の1つとして、労働環境があります。
これまでは、各々の事業者が社内の雰囲気を紹介したり、先輩社員の声などを通じて求職者に労働環境を伝えていました。
確かに、それらの情報を知ることによって、ある程度事業者の雰囲気を知ることができました。
しかし、それはあくまで事業者や先輩社員などから与えられる「主観的なもの」であり、第三者からの「客観的な評価」として得られるものではありませんでした。
ホワイト経営認証が導入されることによって、求職する事業者の、より公正な情報を知ることができ、求職の際の事業者選びに役立ちます。
このように、「事業者」、「顧客・取引先」、「求職者」3者に対してメリットがあることから、大手事業者から中小の事業者まで、自社の信用を高めていこうとする事業者が導入するのではないかと予想されています。
認証には審査があり、2018年9月に行われた第2回の「自動車運送事業のホワイト経営の『見える化』検討会」の時点で、「認証制度ができた場合申請を検討するかどうか」というアンケートでは、「申請する方向で検討する見込み」が28%、「おそらく申請する方向で検討することになると思う」が36%と、前向きに検討する方向の回答をした事業者がおよそ64%にのぼりました。
また、認証の申請手数料に関しても、さまざまな金額が検討されています。
アンケートに回答した事業者の希望にもできる限り沿いつつ、正常な運営が可能な金額を設定する、としています。
今後、自動車運送事業のホワイト経営認証の制度の詳細が少しずつ決まっていきますので、制度が実施されたときに自社はどうするのか、今のうちに考えておくと良いでしょう。
いかがでしたか?
今回は「自動車運送事業のホワイト経営認証制度」についてご紹介しました。
すでに、「ホワイト企業」、「ブラック企業」という言葉が登場してから短くない月日が経っていますが、今回の自動車運送事業のホワイト経営認証制度(仮称)のように、制度として国が取り組むからには、しっかりと吟味して実態に即した制度が出来上がることを祈っています。
出典:国土交通省ホームページ 「自動車運送事業のホワイト経営の「見える化」検討会(http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk1_000023.html)」