2018年9月、いすゞ自動車が新型の小型トラック「エルフ」でEV(電気自動車)モデルを開発、2020年までに量産を開始すると発表しました。
2017年に、三菱ふそうが小型トラックの「キャンター」にEVモデルを量産、販売開始したのに続き、国内の大手トラックメーカーでは2番目となる運送用トラックのEVモデルの発表となりました。
今回は、EVトラックとはどういうものか、今後の展開などについてもご紹介していきます。
目次
EVトラックとは
EVトラックとは、電気を動力とする自動車の1つで、日本では三菱ふそうが2017年に発表した「eキャンター」を、世界で初めて量産を開始しました。
日本国内では、ヤマト運輸、セブンイレブンなどが実際に採用し、既に全国の道路を走っています。
動力が完全に電気なので、通常の燃料タンクにあたるフレームの側面部分にはバッテリーのセルがあり、給油口の代わりに充電口があるところも他の車と違うポイントです。
EVトラックの特徴は、ディーゼルエンジンもガソリンエンジンも使わないので、排ガスが全く発生しないことや、エンジンを稼働させるための騒音も大幅に減らすことができることです。
特に、騒音が少ないため、これまで大きな問題であった「夜間走行時の騒音問題」が解決に向けて大きく前進しました。
これにより、夜間にものを運ぶことの多い全国チェーンのコンビニや飲食店での活用が期待できます。
乗用車のEVモデルだと、完全な新モデルとして、形状や運転席などが大きく変わってしまうことが多いのですが、EVトラックは使用感が変わってしまうと業務に支障が出てしまうため、外観や運転席は通常のディーゼルエンジンのモデルとほぼ同じものが使用されています。
メリットが大きい一方で課題もたくさん?燃料について
恐らく、EVトラックが持つ最も特徴的であろうポイントが、燃料の違いではないでしょうか。
ディーゼルエンジンのトラックでは軽油を使用しますが、EVトラックでは電気を使用します。
軽油の補充は、ガソリンと同じく「全国のサービスステーションでの給油」になりますが、EVトラックでは充電ユニットがある最寄りの建物、例えばサービスステーションや、自社工場などで補充します。
自社の工場内で充電し、目的地に輸送後、充電して戻ってくるという動きができれば、燃料の管理が非常にスムーズになるほか、費用も軽油のときに比べて抑えることが可能になるでしょう。
決まった時間に出発し、決まった時間に帰ってくるような、短距離の店舗配送などであれば、業務終了後、自社の充電設備を利用して充電開始し、翌日の出発時には満充電の状態で出発するといった使い方も可能になります。
また、電気を燃料として動くEVトラックは環境面でも大きなメリットがあります。
軽油と違い排気ガスが発生せず、空気を汚染しないことや、エンジン音が小さく騒音公害が発生しにくいことなども、メリットとして挙げられるでしょう。
一方で、課題もまだまだたくさんあります。
まずは航続距離について。
現在販売や発表がされているEVトラックの航続距離は、満充電の状態で約100キロメートル前後と言われています。
短距離の運行ならば可能ですが、一定以上の長距離になると途中で充電を行わなくてはなりません。
より効率の良いバッテリーの開発が課題となります。
同じく、バッテリーに関係する課題として、充電時間があります。
現在、EVトラックの充電時間は、空の状態から満タンにするまで急速充電で1時間半、普通充電だと11時間かかります。その間車両の運行ができないのはもちろんのこと、出先で充電する場合は車両とともにドライバーの行動も制限されます。
EVトラックの使用目的を限定することで一時的な解決は可能ですが、充電時間が短縮できるようなバッテリーの開発や、充電設備の普及などの技術的な課題をクリアしないと、根本的な解決にはなりません。
充電設備が少ない点もあります。
現在、EV自動車用の急速充電が可能な設備は全国に約7000カ所ありますが、そのほとんどは乗用車向けです。
EVトラックもトラックではあるので、駐車したり充電したりするには、ある程度のスペースが必要になります。
しかし、EVトラックに対応したサービスステーションなどはまだ数が少なく、十分な数が設置されているとは言えない状況です。
また、騒音の減少というメリットとしてエンジンの静音性が高くなったことをご紹介しましたが、これは歩行者が接近するEVトラックに気付きにくくなるという面も持っています。
2018年3月から、ハイブリッド車とEV車の新型車全てに対して設置が義務付けられた、歩行者に車両の接近を知らせる「車両接近装置(AVAS)」の取り付けや、新たな安全運転支援装置の設置が求められています。
このように課題も多いEVトラックですが、今後技術の進歩や周辺設備の充実などによって、さらに普及していくことでしょう。
もし今後EVトラックを購入しようと思うのであれば、周辺の設備や使用方法に即しているかどうかなどをしっかりと調べた上での運用をおすすめします。