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トラック運送業界の「いま」と「これから」

以前、過積載についての記事でトラックドライバーの労働環境について少し言及しましたが、依然としてトラックドライバーの人材不足は深刻です。

なぜこのようなことになったのか、今後どのようになっていくのか、今回はトラック運送業界の「いま」と「これから」についてのお話です。

トラック運送業界の人材不足はいつから?

そもそも、トラック運送業界が「人材不足だ」と言われ始めたのはいつからなのでしょうか。
2003年の国土交通省が発表した「輸送の安全向上のための優良な労働力確保対策の検討報告書」では、2003年時点では需要と供給は均衡を保っており、そこから2015年までの間、ドライバーの数はほとんど増加していないのに対し、トラックドライバーの需要が年々増加しています。

ドライバーの数は増えていないものの減少もしていない、にも関わらず、ドライバーの需要が多くなったことにより、相対的に人材不足となっていきました。
このことから、トラック運送業界の人材不足は2003年を境に起こり始めたといえます。

トラック運送業界の人材不足の原因は?

トラック運送業界の人材不足は、上述の通りドライバーの数に対して、それを求める需要の数が急増したことがあげられます。

特に、インターネットのサービスが広がり、Eコマースと呼ばれる市場が急激に成長したことがあげられます。
2017年の調査では、直近5年間の市場の成長とともに荷物の数が毎年1~2億個のペースで増加しています。

荷物の数が増えていることに加え、荷物の載せ方にも変化が訪れています。
E コマースの普及により個人宅への配送が増え、一度の配送で運ぶことができる荷物の量が少なくなるケースもあります。
時間指定便や、再配達などの時間を細かく設定してある場合、1つでもその時間帯の中に運ぶものがあれば、他に積んで走る荷物がない場合でも運ばなければならないため、トラック1台当たり、そしてトラックドライバー1人当たりの作業効率が非常に悪くなってしまう傾向があります。

このように、需要の増加と1台あたりの運送効率の悪化が、相対的なトラック運送業界の人材不足につながっていくと言えます。

人材不足への現在の対策

トラック運送業界の需要の減少は大きな問題となっており、現在日本では制度や技術開発によるさまざまな対策がとられています。

トラック運送料金の見直し

日本のトラック運送料金は安いです。
消費者にとって「送料無料」や「全国一律送料」等はうれしいことですが、その分運送会社は利益を得にくくなってしまいます。

利益が出なければ賃金の確保もできず、人材は不足して、結果としてトラックドライバー1人の負担が増えてしまいます。
そのため、現在ではトラック運送料金の見直しが行われ、2017年8月には国土交通省が標準貨物自動車運送約款の改正と、運送事業運送料金の定義を定めた通達「一般貨物自動車運送事業における運賃及び料金について」を自動車局貨物課長から通知し、同年11月に施行されました。
この改正は運送に関わる料金を具体的に表記する義務などを定めたもので、運送会社の立場を明確化することによって適切な料金設定を行い、荷主から適正な料金を受け取れるようにしたものです。

また、運送業界大手のヤマト運輸では、2017年にトラック運送料金(基本運賃)の値上げを行いました。

トラック運送業界では荷主の立場が非常に強く、運賃交渉が難しい運送会社にとっては依然として厳しい状況が続いていますが、制度の改定によって過積載への荷主の責任が大きくなったり、今回のヤマト運輸のように運賃の値上げを行う会社が登場することで、トラック運送業界全体で運送料金に対して見直しを行う空気ができれば、人材不足に対しても良い影響を与えることができるでしょう。

トラックの技術開発による運送効率アップ

現在、トラックに限らず自動車に関してさまざまな技術が開発されています。

例えば運転支援技術。
走行中のスピードの調整やブレーキの動作などを一部システムが肩代わりすることによってドライバーの負担を軽減するシステムです。
(いわゆる「自動運転技術」とは異なり、走行中のドライバーの運転を支援する技術です。)

長時間トラックを運転するトラックドライバーにとって運転時のストレスは大きな課題です。
車体の揺れを軽減したり座り心地をよくするなど、運転支援技術のようなシステム以外にも、近年では安全かつ快適、そして燃費効率よく走行することができる車両がトラックメーカーから開発・販売されています。

他にも、エンジン性能の進化や車体の軽量化など、運送効率アップにつながる新たな技術の開発を日夜、トラックメーカーや架装メーカー各社が行っています。

今後導入が期待されているのは、トラックの自動隊列走行技術でしょう。
1人のドライバーあたりの運送効率向上を図る技術のひとつとして、1台のトラックにドライバーが登場し、その後ろに自動制御で走行するトラックを追従させることで、1人のドライバーが複数台分の荷物を運搬できるようになる技術です。

このように、いくつかの観点からトラックドライバーの待遇や、運転の環境が改善されていくことで、少しずつではありますがトラック運送業界の人材不足が、解消に向けて動き始めています。
今後の技術の発展や制度の整備によって、トラック運送業界がさらに活性化していくことを願っています。

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