エンジンルームに関する問題としてはオーバーヒートが有名ですが、冬場に起きる「オーバークール」という症状にも、気を付けなければいけません。
しかし、オーバークールという言葉は、あまり馴染みがないかもしれません。
そこで今回は、オーバークールの原因や症状、対策法などについてご紹介していきます。
目次
オーバークールとは
そもそも、「オーバークール」とはどういうことなのでしょうか。
オーバークールは、エンジン内部の温度が上がらなくなってしまう状態のことを指します。
エンジン本体やクーラント(LLC)と呼ばれる冷却液が、本来の適正温度よりも低くなりすぎ、さまざまな不具合を引き起こします。
ちなみに、似たような名前の「オーバーヒート」は全く逆の症状で、エンジン内部の温度が異常に上がってしまう状態です。
オーバークールになるとどんな症状が起こるのか
オーバークールになると以下のような症状が起こります。
・燃焼機能が悪化するので、不完全燃焼になりやすく、燃費性能が悪化しやすくなります。
・不完全燃焼が起こることにより、黒煙の発生など、環境への悪影響の可能性が高まります。
・エンジンがスムーズに動かないので、エンジンオイルの劣化が激しくなりやすく、エンジンそのものの劣化も招きやすくなります。
・エンジンの温度がなかなか上がらないので、頻繁にエンストが発生するようになります。また、エンジンの焼き付きが起こり、全く動かなくなる恐れもあります。
オーバークールの症状の中でも特に危険なのは、頻繁にエンストが発生する事です。
交通量の多い市街地などを走行する際に、オーバークールの原因によるエンストが発生した場合、渋滞や事故など、別のトラブルに発展しかねません。
だからこそ、一般の乗用車のみならずトラックでもオーバークールに対して注意を払っておく必要があります。
オーバークールの原因は何?
先に述べた通り、オーバークールとオーバーヒートは全く逆の症状だとご紹介しましたが、その原因は非常に似通っています。
オーバークールの原因として考えられるのは外気温が極端に低下している他、ラジエーターの故障などが挙げられます。
そして、オーバークールの最大の原因として挙げられるのがサーモスタットの故障です。
サーモスタットは、エンジン内部の温度を感知して適切な温度に調節する役割を持つパーツです。
エンジンの温度が上がりすぎている場合、クーラントをより多くエンジンルーム内部に循環させエンジンルームを冷やしていき、逆にエンジンの温度が低すぎる場合にはクーラントの循環を止めてエンジンの温度を上げるようにしていきます。
サーモスタットが故障していると、エンジンの温度を適切に調節することができなくなってしまうため、オーバークールやオーバーヒートの原因になります。
エンジンルームにクーラントを循環させるラジエーターの故障も、オーバークールの原因となります。
ラジエーターが故障すると、エンジンルーム内部の温度を調節するためのクーラントを適切な分量で送り込むことができなくなるので、エンジンルームの内部がうまく冷やせずにオーバーヒートになったり、冷えすぎてオーバークールになったりします。
このようにエンジンルーム内部の機能が正常に動かなくなってしまうことの他に、単純に外気温が寒すぎて、エンジンを動かしてもすぐに冷まされてしまってオーバークールになるケースもあります。
オーバークールの対策は?
ここまでオーバークールの原因についてご紹介しました。
原因がわかれば対策することもできますので、ここからは、オーバークールの対策についてご紹介していきたいと思います。
オーバークールの対策として挙げられるものは大きく2つあります。
オーバークールを事前に予防する方法と、オーバークールが発生したときに応急的に対処する方法です。
まずは、オーバークールを事前に予防する方法ですが、定期的に「サーモスタット」と「ラジエーター」の点検を行い、必要に応じて交換することがおすすめです。
ちなみに、自動車のサーモスタットの平均寿命は10年程度と言われています。
当然、車両の使用状況や走行距離によって寿命の長さは変動しますので、一概に言い切ることはできませんが、サーモスタットの寿命の目安として覚えておくと良いでしょう。
ラジエーターの故障に関してはさまざまな原因が考えられます。
ラジエーターキャップやガスケットの破損、クーラントに異物が混入したことによるパイプの劣化などが主な故障原因です。
ラジエーターはサーモスタットに比べて交換費用が高いので、本体に異常が出る前に、ラジエーターキャップやガスケット、パイプの交換で済ませられるうちに対処しておきましょう。
実際にオーバークールが発生した時の対処としては、エンジン内部の温度をすぐに上げることが有効です。
例えば、ラジエーター前の外気取り込み口をふさぐことで、クーラントの冷却を減らしつつ、エンジン内部に冷たい風が入らないようにします。
他に、エンジンを始動してから走り出すまでに少し長めの時間をおいたうえで発進し、走行中もあまり高速で走行しない、というような工夫で一時的に対処することができます。
ただし、当然ながらこれらの方法は応急的な対処方法であり、根本的な解決にはなりませんので、後で必ず整備工場やディーラーなどで整備と点検を受けるようにして下さい。
いかがでしたでしょうか。
今回は、これからやってくる寒い季節に起こりやすい、トラックのオーバークールについてご紹介しました。
オーバークールは放っておくとエンジンが動かなくなってしまう非常に重大な症状です。
事前に予防することは勿論、オーバークールの予兆を感じたら、なるべく早い段階で対処しましょう。