トラックドライバーの皆さんは睡眠不足にどのような対策をしていますか?
体調管理や車内環境の整備など、さまざまな方法で対策をしているかと思います。
実は、2018年6月からトラック・バス・タクシーのドライバーのうち、睡眠不足のドライバーに対して乗務禁止とする「貨物自動車運送事業輸送安全規則」と「旅客自動車運送事業運輸規則」の改正案が国土交通省から発表されました。
運送業界はもちろんのこと、土木や建築の業界でも少なからず影響が発生すると予想されます。
そこで今回は、国土交通省から発表された改正案のうち、トラックを運転する際に関係する「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の改正についての詳細と、睡眠不足への対策をご紹介していきたいと思います。
目次
睡眠不足時の乗務禁止、その具体的な内容は?
「貨物自動車運送事業輸送安全規則」は、その名の通りトラックなどの貨物自動車を使用した運送や輸送に関して、安全に運行するための規則です。
元々は、ドライバーの乗務前に点呼を行い、体調を確認するほか、ドライバーからの体調不良の申し出を受けて危険な運転を回避するために設けられている制度でしたが、そこに「疲労」の項目はあれど「睡眠不足」の項目はありませんでした。
今回の改正では、事業者側が行う義務のある「トラック乗務前の点呼」の際の確認事項として、「疲労」「病気や怪我(に伴う体調不良)」「酒気帯び」などの確認事項の中に、新たに「睡眠不足」を加え、またドライバー側も「睡眠不足による体調の悪化」がある時は申し出を行い、結果「睡眠不足」と認定されたドライバーについては乗務を禁止する、というものが加わりました。
貨物自動車運送事業輸送安全規則では、上述のような禁止事項に違反した場合、ドライバーや運行管理者に「行政処分」が下されることになります。
改正の発端となったのは居眠り運転による事故だった
今回の改正の発端となったのは、2016年3月に発生した居眠り運転が原因による事故ではないかといわれています。
事故当時、ドライバーには疲労がたまり、睡眠不足であったことが明らかになっています。このことから睡眠不足に対して「危険」という認識を強め、改正に踏み切ったのではないでしょうか。
今回の改正で良くなると予想される点
今回の改正で、トラックのドライバーに加え、運行管理者、さらにその上長を含めて「睡眠不足」に対する責任が強くなりました。
このため、事故の減少へとつながると予想されています。
特に、「疲れ」「睡眠不足」のような数値で表すことが難しいものに関して、ドライバー側に主導権のある形で申告することができるため、身体の不調がある時に無理をしなくても休むことができることが大きな利点とされています。
問題点はないのか?
ただし、この改正によって「ドライバーの健康への待遇改善が見込める」という声がある一方で、現在運送業界全体で抱えている「人手が足りない」という問題がある以上、「いたずらに各社の生産効率を落とすだけではないか」との声も上がってきています。
更に、睡眠不足の解消のために一度により多くのものを運ぼうとして、「過積載」となってしまう本末転倒な結果を危惧する声もありました。
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また、現状では点呼時などの確認の際に「自己申告」で行うため、何をもって睡眠不足と判断するかが確立されておらず、結局歩合や残業による賃金が欲しい、と思っているドライバーにとってはあまり意味をなさないのではないか、という考え方もあります。
このように、立場や受け止め方によってこの改正の持つ意味は変わってくるのではないでしょうか。
そこで、ここからは改正への考え方から少し方向を変えて、「改正後の状況でも問題なくドライバーが業務できる睡眠不足対策」についてご紹介していきたいと思います。
ドライバーにできる睡眠不足対策
睡眠不足の原因は、主に「睡眠時間」と「睡眠の質」のどちらか、あるいは両方に問題があることだといわれています。
しかし、荷主がいて、上長がいて、彼らの要求や要望に応えなければならないドライバーにとって、「睡眠時間を確保しましょう!」といっても限界があります。
そこで今回は、「睡眠の質の向上」に焦点を当ててご紹介します。
「睡眠時無呼吸症候群」の対策
睡眠の質を向上させるために行っておきたいのが「睡眠時無呼吸症候群」と呼ばれる症状への対策です。
いわゆる「いびき」を発生させる症状で、医学的には一晩に30回以上の呼吸停止(10秒間以上気道に空気が流れていない状態)か、1時間以内に5回以上の呼吸停止が起こった場合に睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
呼吸が止まるということは身体が酸素不足になるということです。それに対応するため身体は無意識に心拍数を上げて脳も身体も半分起きている状態を繰り返します。
睡眠は本来、休息のために行うものですが、断続的に起きて寝てを繰り返す状態では休息は満足にとれません。
その結果、翌日に睡眠不足や疲れ、体のだるさや集中力の低下を引き起こすのです。
睡眠時無呼吸症候群を改善することで睡眠の質が向上し、同じ睡眠時間でも休息の効果がより大きくなります。
睡眠時無呼吸症候群の対策方法とは
改善の方法としてはさまざまなものがありますが、いずれも「気道を広げる」方法と言って良いでしょう。
・病院で治療してもらう
病院で診てもらうことによって、自分の症状に合った専門的な治療をしてもらうことができます。
内科や耳鼻咽喉科などで睡眠時無呼吸症候群に対応していることもあれば、「睡眠外来」などがある病院もあります。
もし睡眠時無呼吸症候群に対応している医療機関が近くにない時は、かかりつけ医に相談してみましょう。医学的な「治療」は、症状によって適切な方法が異なるため、具体的なものの紹介については割愛し、生活の中で「改善」できる方法をご紹介しましょう。
・睡眠中の姿勢を変える
もし睡眠時に「仰向け」で眠っているのであれば、睡眠時の姿勢を変えることによって、睡眠時無呼吸症候群を改善できることがあります。
具体的には、「横向きに眠る」ことです。仰向けに眠っていると重力によって舌が喉の奥に落ちやすくなって、気道を塞いでしまいやすくなるのです。横向きに眠ることによって気道を確保しやすくなり、睡眠時無呼吸症候群を防げるのです。
また、自分に合った高さの枕を用意することも大切です。・体質改善
睡眠時無呼吸症候群の原因の1つとして肥満があります。
喉の部分の脂肪が増えて、気道を圧迫してしまうのです。また、鼻炎がある人も睡眠時無呼吸症候群になりやすいとされています。
鼻炎がある場合、睡眠時に口呼吸をするため口内が渇きやすく、気道も狭くなるので睡眠時無呼吸症候群になりやすいのです。
これらの体質改善により気道を確保し、睡眠時無呼吸症候群を改善しましょう。
睡眠時無呼吸症候群の対策をすることで、睡眠の質は飛躍的に上がります。
寝る前にリラックスできる習慣をつくる
寝るときにリラックスできているかどうかが睡眠の質に大きな影響を与えます。
トラックを運転していると、車内のキャビンで眠らなくてはいけないこともあるかと思います。
まわりの雑音もあり、そこまで広いとは言えないキャビン内で「リラックスして眠る」のはなかなか難しいです。
しかし、いくつかのコツを押さえておくことで格段にリラックスして眠れるようになります。
・眠る前の準備
「準備」といっても「ベッドメイクを完璧にしよう」という話ではありません。
眠りにつく前の時間、食事や入浴をどのようにするかで睡眠時にリラックスできるかどうかが変わるのです。
食事は眠りにつく3時間前までに終わらせておき、入浴は眠りにつく前の約1時間前にシャワーを浴びて汗を流しておくことをおすすめします。・耳栓をする
意外な効果を発揮するのが耳栓です。
特にトラックの車内で眠る時は、施設やパーキングエリアなどの駐車スペースを利用することになりますが、当然他の車両がやってきたり出ていったりします。
その時エンジン音や走行している音、場合によっては音漏れの音楽や施設内の音楽などが聞こえてくることがあります。睡眠に集中しようとすると意外と気になるこれらの音をカットするために、耳栓を使って眠ることに集中できるようにするのです。
これらの対策を行い、睡眠時(特にトラックの車内で眠る時)にリラックスして眠れるようにすることで、睡眠の質を向上させ、睡眠不足を解決しましょう。
いかがでしたか?
今回は睡眠不足についてご紹介しました。
睡眠不足は、確かに交通の安全上規制が入ったという事情もありますが、ドライバーの健康を守るためにも改善していくべき問題です。
自身でできる睡眠不足対策を行い、貨物自動車運送事業輸送安全規則の改正でも問題なく運行できるようにすると、事業者にとっても、荷主にとっても、国にとっても、そして何よりドライバーにとってもより良い結果になると思っています。